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2024年3月期を終えて

~DX推進事業は今年も大幅成長 事業環境は堅調に推移し売上高・営業利益通期業績予想達成

代表取締役社長 中西 聖

 

 2024年3月期は、経済活動の正常化を背景に、個人消費の持ち直しと雇用情勢の改善により、緩やかな回復基調が続きました。一方で、歴史的な円安の進行、資源価格の高騰、物価上昇などにより経済環境・事業環境は引き続き注視が必要な状況であります。また、マイナス金利政策の解除など日銀の金融政策の修正による長期金利の上昇圧力については、当社グループのDX不動産事業への影響が想定されるものの、現時点においては低金利の状況が継続しており、収益不動産のニーズへの的確な対応と社内DX推進や組織強化などにより販売は好調に推移しています。

 

 

 

 

 当社グループは2023年10月のホールディングス化に伴い、DXを基軸とした事業活動を一層強化し、成長ドライバーであるDX推進事業は、サービス開発や積極的なM&A、人材採用により、今年も大幅に成長し、2021年3月期の事業立ち上げ時から1年で売上高8億円、2年で売上高18億円、そして3年目である当年度で売上高26億円と大幅に飛躍してきました。DX推進事業では、顔認証プラットフォームサービスのソリューション(顔認証デバイス)導入の拡大やDX支援(クラウドインテグレーション、システム受託開発)の受注案件拡大に注力し順調に案件数を拡大させ、大幅に売上高を伸ばしている状況となっています。とりわけ、顔認証プラットフォームサービスの「FreeiD(フリード)」を用いた顔認証デバイスの導入では、マンションを中心にその導入数が拡大し、2024年3月末時点において、86棟のマンションへの導入を実現し、国内でのトップランナーになっていると認識しています。今後も、マンションを中心に導入が拡大することが想定され、当該マーケットにおける独占的地位になることを目指したいと考えています。

 

 一方、当社グループの収益の柱であるDX不動産事業では、DX不動産会員数を当事業における事業コアとして位置づけ、事業拡大のための重要なストックデータとして、この数の増加に注力し、順調に拡大してきています。国内においては、長期金利が緩やかな上昇傾向にあるものの、依然として低金利の状況が続いており、これを背景として収益不動産へのニーズが強く、首都圏の中古マンションの取引数は高い水準で推移し取引価格が上昇するなど事業環境が支えたこともあり、当事業においても売上高を伸ばすことが出来ました。また、当年度はDX不動産事業で初となるM&Aを実行し、ストック収入のベースとなる管理戸数も大幅に伸ばすことが出来ました。

 これらの結果として、グループ全体の売上高は初めて400億円を突破し、前年比+14.5%の426億円となり、売上高、営業利益ともに通期業績予想を達成しました。

 

 

~オール顔認証マンションの増加でDX推進事業の売上高も増収へ~

 

 顔認証マンションは、前年度末時点33棟だったのに対し、当年度末時点ではオール顔認証マンションを含む顔認証導入マンションで86棟の導入実績を上げており、その成長率は200%を大きく超えています。顔認証プラットフォームサービス「FreeiD」は、2021年1月からプロパティエージェントの開発マンションでの全面導入を実施し、2022年からは他社開発マンションに向けた導入も行っています。最近では、三菱地所レジデンスや長谷工グループ、東京建物等の大手デベロッパーにも導入が広がり、国内大手のデベロッパーの多くでFreeiDの導入が決まっており、FreeiDを用いた顔認証が標準採用される取引先も増加しております。

 また、三菱地所の総合スマートホームサービス「HOMETACT」とのパッケージ化及び共同販売も開始するなど、当サービス加速的な成長の土台が整いつつあると思っています。

 

 

 

今後の方針 

~スマートシティを目指し「顔ダケで、買い物。」ができる顔認証決済「FreeiD Pay」の開発も進む~

 

 顔認証マンションは、当社グループのアセットへの付加価値の提供拡大のみならず、他社開発・管理のアセットへの付加価値提供が拡大していることを意味しています。それに伴い、「顔ダケで、買い物。」ができる顔認証決済「FreeiD Pay」の実証事業も京都府亀岡市やSHINAGAWA TECH SHOWCASEで開始されるなど、付加価値を更に拡大させてユーザーに提供していくことを考えています。

 今後の新しいサービスの具体的な案として、ポイント収集・クーポン発行、POSレジなどの連携といったことも検討しており、これにより『マルチプラットフォーム』となるべく、サービス開発にも着手していきます。加えて、この付加価値の提供の輪を拡大すべく、パートナー企業も着実に増加させていく方針であります。

 このように当サービスは、新規受注を伸ばしつつ様々な導入実績を積み上げることで、サービスの可能性を拡大、認知度アップを掛け合わせ、中期的な成長に寄与するよう活動していく方針です。

 

                                                                                                                                                    

             

 

 

2025年3月期の売上高500億円を目指して

 

 DX推進事業全体では、顔認証プラットフォーム「FreeiD」の導入予定が当年度の2倍程度の案件を受注していることや、クラウドインテグレーションサービスとシステム受託開発においても新規案件の受注拡大を主要因に、当年度と同程度以上の成長率を想定しています。一方、DX不動産事業においても、東京のマンション価格の上昇や転入超過拡大により増収を想定していることから、2025年3月期のグループ全体の売上高は節目となる500億円への増収を計画しています。

 また、営業利益は、DX不動産事業の着実な利益獲得を目指すものの、資源価格・建築費の高騰や長期金利の上昇に注視する状況が続いていること、DX推進事業の更なる拡大のための先行投資を積極的に行うことを考慮し、26億円を想定しています。

 

 

~積極的なM&Aと事業拡大~

 

 ホールディングス化後、より一層注力する領域となるDX推進事業は、現体制においても高い成長率を維持できると考えていますが、これをさらに伸ばすべく今後も積極的にM&A及び優秀な人材の獲得に注力していきます。ホールディングス化による事業体制の明確化により、多少なりともあったであろう不動産事業においてDXを推進している会社、というイメージは全く無くなりました。そのため足許ではM&A案件の相談件数も増加傾向にあります。今後は、これら案件を着実に実現していき、DX推進事業の加速的な成長を目指すとともに、ソフトウェア投資の強いニーズにより受注が好調なクラウドインテグレーション・システム受託開発も、顧客のニーズを的確に捉えることで案件数を拡大し、M&Aによる拡大と受注案件数増加による拡大の2軸で、DX推進事業を飛躍的に伸ばしていきたいと考えています。

 

 

~DX不動産事業で売上高1,000億円を目指す~

 

 DX不動産事業単体にて、売上高1,000億円を目指すことを目標に事業運営しておりますが、この目標につきましては、現在においても変わりない目標となっており、遅くても2029年頃には達成したいと考えています。この目標に対し、外部環境を見ると、安定投資商品としての収益不動産の認知度向上、ニーズの高まりは十分に感じており、また、安定的に拡大するDX不動産会員数という基盤、DXにより効率化された事業運営体制という成長に向けた土台は整いつつあります。そのため、ストックデータとなるDX不動産会員数の拡大と物件の確保、その他必要リソースの確保により前倒ししていくことを考えながら、事業の推進をしています。

 

 

~株主様への還元、株式分割・普通配当20%増配予定~

 

 本年度は、機関投資家IR・個人投資家IRともに強化するという方針を打ち出し、積極的なIR活動を行ってまいりました。当年度の年間配当においては、普通配当40円に加え、グループの基幹であり、当社の実質的前身であるプロパティエージェントの20周年記念配当5円を実施し、45円とする議案を株主総会に上程予定です。

 また、当社株式の流動性を高め投資家層の更なる拡大を図ることを目的に、2024年7月1日を効力発生日として普通株式1株につき普通株式2株の株式分割を行わせていただきます。加えて、日頃からの株主様のご高配に感謝し、2025年3月期の普通配当は、前期の20円(分割考慮前40円)の配当をベースに4円(分割考慮前8円)の増配をし、年間配当24円(分割考慮前48円)を予定し、株主の皆様への還元機会増加のため、一部を中間配当として還元することを予定しております。

 昨今は、PBRやROICなど株主資本に対する注目がより一層高まっていると当社でも認識しており、資本政策や株主の皆様への還元は当社の重要な経営課題の一つと認識しています。ホールディングス化後も柔軟な資本政策をとり、株主の皆様の満足度が向上するよう継続的に検討してまいる所存ですので、今後とも、より一層のご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

2024年5月